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JICA留学生が語った「中古農機具」の必要性。アフリカが直面している農業問題とは?

マーケットエンタープライズ(以下、ME)は外務省が管轄するJICAが運営支援機関である一般財団法人日本国際協力センター(以下、JICE※)から派遣されたエジプト、ナイジェリア、マラウイ出身の留学生インターンシップの受け入れを行なった。

受け入れ先は、世界80カ国以上に中古農機具の輸出を行なっているマシナリーカンパニー。Journal編集部では留学生へ取材を行なった。そこでは、どんな内容が語られたのか本記事にて紹介する。

※一般財団法人日本国際協力センター(JICE)は、独立行政法人国際協力機構(JICA)や関係省庁などから国際協力関連業務を受託して実施する一般財団法人。
「留学生受入支援」「国際研修」「国際交流」、日本国内の「多文化共生」や「日本語教育」など人材育成分野を中心に国際協力活動の一端を担っている。

多様なバックグラウンドを持つ3名がMEに集結

「ABEイニシアティブ」(※)と「SDGsグローバルリーダー」(※)のそれぞれのプログラムからインターンシッププログラムに参加。9日間のプログラムで、前半はマシナリーカンパニーが所在する鳥取リユースセンター(以下、鳥取RC)、後半は本社というスケジュールが組まれました。

『ABEイニシアティブ』
アフリカの成長の鍵となる人材の育成、日本企業の水先案内人となる人材の育成。2013年第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で日本政府から発表され、2014年に第一期生の受入れが開始されました。それ以降、アフリカ全54か国から、延べ約1,600人(2022年12月現在)が本プログラムに参加しています。

『SDGs グローバルリーダー』:
各国が抱える SDGs の政策課題の解決に向け、政策決定に深く貢献する高度人材・トップリーダーとなること、そして、日本の関係者(官公庁、民間企業、大学、NGO、JICA 等)と各分野のネットワークを構築・強化し、結果として、日本を良く知る人材の育成、日本との繋がりを強化することを目指しています。

ジャフェットさん
出身国:マラウイ
プログラム:「ABEイニシアティブ」
15年JICAに勤めた実績もあり、アグリビジネスの専門家。マラウイの農業バリューチェーンに精通している。

サラさん
出身国:エジプト
プログラム:「ABEイニシアティブ」
バイオプラスチックや発酵産業を学ぶ大学院生。

シュアイブさん
出身国:ナイジェリア
プログラム:「SDGs グローバルリーダー」
大学では農業および生物学の研究をしており、アグリビジネスの開発とマーケティングに精通している。

研修は計9日間。研修内容は主に中古農機具の事業理解からの座学から始まり、実際に輸出をする取引の実践、そして最後には学びに基づいたプレゼンを発表する機会がありました。

最終日に社長に向けてプレゼンをしている様子

JICEインターンの様子

最終日となる9日目、最終日に本プログラムを終えた三名の留学生へインタビューを実施。研修の率直な感想から将来実現していきたいことまでをインタビューしました。

アフリカの留学生が中古農機具事業を運営するMEにインターンしたきっかけとは

ー今回のプロジェクトに応募したきっかけ、またJICAを通じて留学したきっかけは何ですか?

シュアイブ:私はJICA経由で留学し、日本の大学で農業と生物学の研究を行っています。ナイジェリアは日本の柔らかく整備された土壌と違って砂利が多く、整備されていないので農業には不向きです。よって機械を必要としている所が多くあるんです。今回プログラムに参加したのはナイジェリアをはじめ、アフリカの農業課題の解決のキーマンとして学びたいと思ったためです。

ジャフェット:私は政府で働いた経験があります。丁度、JICAがマラウイ政府に留学に適している人物を募りました。そして、まずは政府が経歴と現在携わっている事柄と照らし合わせながら、産業と農業に精通していそうな人物が選ばれ、10〜15人のなかからJICAが選出します。私はそのなかで期待値が高かったので選ばれました。かなりの高倍率だったので、責任重大です。

サラ:私は2人とはルートが異なります。当時、私はエジプトの大学生で私が学んでいることと、産業で実際に求められていることのギャップがあるのではないかと感じたのがきっかけです。そのギャップを埋めるべく、何か方法はないかと模索していたところ、JICAの留学プログラムが私の描いたビジョンにピタリと当てはまり、日本の大学院生として農業と生物学を学ぶことにしました。

ナイジェリア出身のシュアイブさん

ー研修を受ける前と後でMEに対しての印象変わりましたか?

シュアイブ:正直、会社名を聞いた時は知りませんでした。私は政府で働いた経験がありますが、民間企業は初めてであらゆることが新鮮。市場動向や顧客体験、農機具の歴史について、たくさんのことを学び、コミュニケーションを交わしてとても楽しかったです。

ジャフェット:MEにインターンすることが決まって、私も会社を知らなかったので事業理解のために公式Webサイトを隈なくチェックしました。

どんなビジネスを展開しているのかを調べていく内に80カ国以上もの国に中古農機具を輸出していること、そして自国で抱えている農業課題を中古農機具を使うことによって解決できると感じました。将来的には私が窓口になってビジネスを拡大できたら良いと思います。

エジプト出身のサラさん

サラ:最初は正直、怖かったんです。私の専門分野はバイオテクノロジーで農業は専門外だったので、このインターンシップが乗り切れるかどうかで、頭がいっぱいでした。私はアフリカの農業について知識がゼロだったのです。

しかし、MEの皆さんが本当に親切にしてくれて、異なるバックグラウンドでも適切なプログラムとアドバイスを与えてくれました。研修期間中は私のベストを尽くせたので乗り越えられたし、本当にたくさんの経験を得ることができました。専門外かどうかは大きな問題ではなくて、何事も一生懸命取り組むことで有意義な時間が得られるんです。

中古農機具がアフリカの農業を救うと感じたワケ

ーアフリカ農業における現状の課題はどんなことでしょうか?

シュアイブ:68000個分の農業地帯がナイジェリアにはあり、33000台のトラクターがあります。カバー率でいうと全体の約15%。残りの85%は放置されている状態です。

アフリカの人口の半分がナイジェリア人で、75%が農業従事者、全人口をカバーするには100万台のトラクターが必要です。しかし、まだまだ農機具が足りていないというのが現状です。

マラウイ出身のジャフェットさん

ジャフェット:マラウイの人口は2100万人で、人口の80%は農業をしている人たちです。しかし国は貧しく、GDP成長率が低い。小規模農地が約3300ヘクタール、大きな土地だと100万ヘクタールあります。

主要作物はタバコ、とうもろこし、お米。機械化されているのは13%で、2/3は未だ手作業で行われています。なぜかというと、農具の初期コストが高く、民間で機械化の重要性の認識が足りておらず、農家の収益が少ない。農機具がもっと普及すれば、生産性を上げることにより国が豊かになり人々の生活も潤います。

サラ:エジプトは約1億1000万人で南アフリカの3番目に人口が多く、土地が肥沃なのはナイル川付近の土地のみ。砂漠の緑化のためには水が大前提として必要です。

我が国では、中古農機具を既に使っている農家が既にいるので、改めてお客様に紹介する必要はありません。しかし、より浸透させていくには外貨取得をクリアにする必要があります。これらは中古農機具の販売サイトでエジプトの通貨を取り扱えば解決できると思います。

MEの研修を通して得られたものとは

ー中古農機具ビジネスを学んで感じたこと、そして今後取り組んでいきたいことはありますか?

ジャフェット:多くの人が日本の機械に価値を感じています。初期投資も新品だとコストがかかりますが、中古ならハードルが低い。しかし、インターネットの普及率が20%以下になるので、どのように普及させていくのか綿密なマーケティングが必要となります。また、中古農機具の故障した時のスペアパーツの供給も重要ですね。

他にも機械化推進、農家へのプロモーション、銀行の投資、外貨不足など課題は山積みですが、1つずつ解決していかなければなりません。

シュアイブ:ナイジェリアの政府や人々に、MEのマシナリー事業や中古農機具を紹介することによって、現状の問題が良くなることは明らかです。私が窓口になって、MEを自国に紹介すれば双方にとってWinWinの関係になると思いました。

サラ:エジプトでは既に中古農機具が一部で利用されているので、いかにより多くの人に知ってもらい、販路を拡大するかが鍵となります。

アフリカでビジネスを拡大するのは、アジアやヨーロッパと異なり、政府とパートナーシップを結び、拡大していく方が適していると思いました。

ー研修の内容はいかがでしたか?

シュアイブ:ナイジェリアの政府や主要都市へ中古農機具を紹介することで、農作物の安定的な供給に繋がることがよくわかりました。

ジャフェット:MEのインターンシップは大変有意義な時間になりました。今後中古農機具をアフリカにも浸透させていくためにはビジネスパートナーを見極め、アフリカでのネットワークを構築していけたらと思います。
9日間すごくいいムードで歓迎してくれてありがとうございます。

サラ:インターンシップの内容は完璧でした。何も言うことはありません。皆、本当に親切で、友好的で、自分たちのビジネスに誇りを持っており、各人が社会課題に向き合い、より良くしようとするパッションを感じました。
そして、私たちの宗教にも配慮し、祈る場所を提供してくれたこと、そしてハラルフードにも配慮してくれたことに非常に幸せです。JICEやJICA、そしてMEの皆さんに感謝し、更なる飛躍する未来を願っています。

中古農機具を通じて持続可能な社会の実現を目指す

右からマシナリーカンパニー長の有馬、マシナリーの買取販売企画室 室長の佐藤

次は今回インターンシッププログラムのアテンドをした佐藤へインタビュー。

ーーなぜ、留学生の受け入れを実施したのでしょうか?

佐藤:JICAとは以前から接点を持っていて、このようなプログラムがあって受け入れをしないか、と声をかけていただいたのがきっかけです。世界人口増加に伴う食料・教育・産業の課題へ向き合うために、現地の主体性がある人材と接点をもつことは、中古農機具ビジネスを発展させるためにも必要だと感じ、実施しました。現地と同じ課題意識を持ち、(※)CSVの実践を考えていきます。

※Creating shared valueの略
共有価値の創造とは、企業による経済利益活動と社会的価値の創出を両立させること

ーーアフリカの留学生はそれぞれどんな印象でしたか?

ナイジェリアのシュアイブさんは、情熱に溢れており、農業課題解決の意志だけではなく、スマートデバイスの普及についても検討されていて、グローバルリーダーを目指す志を感じました。 

マラウイのジャフェットさんは、自国での経験が豊富でコネクションも多く、それを活かしてアグレッシブに農業機械化率を向上させる施策づくりに取り組んでいただきました。

エジプトのサラさんは、農業とは異なる分野を専攻していましたが、農業分野をマーケティング・社会課題として捉えていただき、積極的に調査・発表をしてくれました。しっかりと分析をした解答が心強かったです。

ーー留学生を受け入れて、今後の展望は?

実際に彼らとコミュニケーションすることで、アフリカには農機具が必要だと改めて思いました。国によってはすでに中古農機具が市場に参入しているケースもあり、更なるマーケットの拡大に向けてそれぞれの国で取引量を増やせる可能性を感じます。今後も中古農機具を通じて、持続可能な社会を実現する最適化商社を実現していきたいと思います。

まとめ

JICAのインターンシップを通して、国と国を繋ぐ未来の架け橋となる方々に向けて、MEの中古農機具の事業理解を深められた体験の場となりました。

「百聞は一見にしかず」とことわざにもある通り、紙面やオンラインで得た情報よりもはるかに目で見て聞いて話したことが価値として脳裏に刻まれます。メンバーの一員として学んだ研修は今後も彼らの記憶に残り、国境間の前進に役立つことができれば幸いです。

MEのアフリカへの輸出国は数としてはまだ少ないですが、近い将来には中古農機具を輸出し、普及させることによりアフリカ各国の先進農業技術の向上、雇用の創出、食糧難の解決の一助になればと考えております。

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